今回の製作記の見どころは、純正エッチングパーツ仕様の高雄をさらなる高みへと改修するための要所を押さえた追加ディテールアップ工作と純正エッチングパーツの取付を考慮した製作手順のご紹介です。
- 起工
- 仮組とパーツ調整
- 船体の溶接痕をMr.ハルモールドチゼルを使って再現する
- リノリウム甲板に0.1mmの真鍮線をきれいに張り付けるコツ
- 純正EPを使用する場合のおすすめ製作手順「第一第二煙突工法」
- 艦橋の組立のポイント
- 真鍮線、ピアノ線を使ったディテールアップ工作
- リノリウム甲板のマスキング作業
- 船体塗装、白と黒で軍艦色に変化を持たしてみる
- 艦載機は社外エッチングパーツを使って超精密化
- ナノドレッドのオプションパーツで対空防御を大幅強化
- 筆塗りで小物を塗りけて情報量をアップさせるポイント
- 木工ボンドを使った防風布の表現
- 旗索と信号旗のお手軽ディテールアップ
- 空中線の張り方 インフィニモデルとモデルカステンの合わせ技
- ロープ張り
- 竣工
- 完成ギャラリー
起工
それでは、高雄の建造を開始します!!
仮組とパーツ調整
造形の整った美しい艦船模型を作るためには、仮組の段階で隙間や歪みを修正するためのパーツ調整がとても重要です。
飛行甲板の支柱と溝の幅が合っていないので修正します。
資料によると支柱の根本は広がっているのが正解なので、船体側の溝を削って修正しました。
D4、D5はカタパルトの台座ですが、ハマりがキツく隙間ができていたので削って調整しました。
主砲の砲身もはめ込みがキツく、このままでは砲身の向きや仰角の微調整ができないので、コの字の内側を広げて調整します。
あともうひとつ、主砲のキャンバス部分は筆塗りになるので、その塗膜厚も考慮してキャンバスの両側を少し削って詰めておくと良いです。
エッチングパーツを使用する場合、必ず第一と第三主砲が第二主砲の砲座に干渉します。
主砲の取付位置を少しオフセットできるよう受けの穴をピンバイスで広げておきます。
甲板と船体の隙間は、エポキシパテで埋めて修正しました。
せっかくパテを練ったので、説明書で取付位置を確認しながら舷側のボートダビットや艦首竿、ラッタルなどエッチングパーツに置き換わる箇所の受け穴もついでに埋めておくと良いです。
私はマジックスカルプというパテを愛用しています。
面倒でもパーティングラインは丁寧に処理していきます。
ここ最近の私の一押し工具がシモムラアレックの職人堅気シリーズ、樹脂切削専用ステンレス製ヤスリ シャインブレード fina TYPEテーパーです。
艦船模型の小さなパーツの成形にとても使い勝手が良いです。私の最近の作品の下地処理はほぼコレ1本で仕上げています。
船体の溶接痕をMr.ハルモールドチゼルを使って再現する
Mr.ハルモールドチゼルを使って、舷側に鉄板の溶接痕を再現しました。
この工具を使えば、誰でも簡単に平行なきれいなスジボリを彫ることができるので愛用しています。
舷側は面が大きく舷窓のディテールだけでは情報量が寂しいので、溶接痕の再現はとても効果的です。
リノリウム甲板に0.1mmの真鍮線をきれいに張り付けるコツ
0.1mmの真鍮線を使ってリノリウム押さえを再現します。
少し前でネット通販で一般的に入手可能な真鍮線の最小径は0.2mmでしたが、最近ではアマゾンがインフィモデルの0.1mmの真鍮線を扱うようになったのでとても助かっています。
リノリウム押さえを真鍮線に置き換える場合は、既存のモールドは削ったほうが位置も合わせやすくなります。削るは完全に消す必要はありません、真鍮線の位置決めの目安にするため写真のようにうっすらとラインが残る程度が理想です。
真鍮線を張り終えたら、甲板をリノリウム色で塗装しておきます。
純正EPを使用する場合のおすすめ製作手順「第一第二煙突工法」
純正エッチングパーツを使用して製作する際で一番難しいのが、構造物が密集した煙突周辺の調整です。
その中でも特に難しいのが次の2か所です。
それでは、私の製作手順をご紹介します。
まずはじめにやっておくこと。
それは煙突内部の仕切り版の取付です。煙突の壁厚を薄くしないと仕切り版を入れることができないので、作業がし易いうちに調整を済ませておきます。
まずは、M1とJ6,7を取り付けますが、L1はの接着は、煙突のジャッキステーを取り付けてからが良いので今は仮置きです。
第一、第二煙突を最初に接着する場合は、K9のパーツを挟んでおく必要があります。
K9の位置を決めは、艦橋パーツを仮合わせした状態でK9だけを甲板に接着します。
第一、第二煙突を固定したら、これらにエッチングパーツ類を取り付けていきます。
ここで、組み上げたK5を後ろ側からスライドさせながら差し込みます。
説明書序盤に登場するE26とE27はK5が決まってから取り付けるのが正解です。説明書では序盤に取り付けるようになっていますが、この段階では角度や位置の調整は不可能です。
あと、E26とK5の位置関係に注目して下さい。E26の先端が少し飛び出ているのが正解です。(※この突起部分に機銃台座が乗ります。)説明書では判断しにくく、はじめての人は迷うポイントです。
第三煙突を取り付けてから、その周辺の構造物を順番に取り付けていきます。
K5さえ、取付てしまえば後はさほど難しいポイントはありません。
以上で煙突周辺の組立、完了です。
艦橋の組立のポイント
艦橋については、とくに難しいポイントはありませんが、測距儀や射撃装置の台座が別パーツになっていますので、水平、垂直のライン合わせには注意が必要です。
正面、真横から確認しながらラインを整えます。
真鍮線、ピアノ線を使ったディテールアップ工作
高角砲のフレームです。0.2mmの真鍮線で改修しました。
1本の真鍮線を2回以上折る場合はマットの上で滑らすようにして曲げると、2か所目もねじれにくいのでお勧めです。
第一マストです。全部作り変えると大変なので、横桁だけ改修します。
強度が欲しい箇所なので、0.2mmのピアノ線を使用しました。ピアノ線はとても硬く普通のメタルニッパーでは一発で刃がダメになるので、専用のニッパーを使用します。
後部マストです。下部のトラスが気になったので真鍮線で改修しました。
マスト上部は、真鍮線同士の接着になるのでハンダを使用します。
ハンダ付けが苦手という方にはクリームハンダがおすすめ。
クリームハンダなら前もって適量盛りつけておくことができるので、素人にも扱いやすいです。
先端を真鍮線に改修するだけでもマストの見た目は大きく変わるのでおすすめの改修ポイントです。
写真にはありませんが、艦首、艦尾竿はピアノ線に改修しました。
艦橋、マストを取り付けます。
いい感じです。
リノリウム甲板のマスキング作業
6mmのマスキングを数種類の大きさの短冊に切り出してから張っています。細かな調整が必要な箇所については、その都度、適切な形状にカットして合わせています。
私の作業スタイルのご紹介です。
マスキングの呼吸、壱の型で確実に貼り付けたマステを密着させていきます。マステに加工が必要になったら、弐の型「切持」を使い、角を落としたり、さらに細くしたりします。
注目してほしいのが壱の型から弐の型へピンセットの持ち方の変化です。その時間、0.1秒。
この型を使えば、いちいちピンセットを手放さなくても良いので作業効率は15%向上します。
私が愛用しているピンセットは、幸和のK-7です。先端の精度とバネが最高です。
どの段階で手すりを取り付けるかは、人それぞれですが、私は作業効率を優先させてこの段階で取り付けることが多いです。
手すりを船体の一番外側に取り付ける場合は、フェアリーダーなどが支障となる場合があります。
私は、手すりのラインを通すことを優先させるため、手すりの下段や中断をカットして処理しています。
船体塗装、白と黒で軍艦色に変化を持たしてみる
エッチングパーツを使用していますので、塗装前に金属プライマーの処理が必要になります。
私は面倒くさがりなのでプライマー入りのサーフェイサー、プラサフを使っています。
きれいに塗り分けることができました。
今回初の試みとして、船体を3色で塗り分けています。
- 軍艦色(2)をベタ塗り。ここまでは普段通りの塗装
- 軍艦色(2)に白を混ぜたものを、上からの日の光を意識して、船体の側面(疎らに)と上面に塗装
- 軍艦色(2)に黒を混ぜたものを、陰になる面に塗装
軍艦色が退色した少しくたびれた高雄をイメージしたのですが、狙い通りの仕上がりになってくれました。
Mr.ウェザリングカラーのステインブランを使って、船体を少しサビさせます。
うまくサビさせるポイントは、水の通り道をイメージすることです。
艦載機は社外エッチングパーツを使って超精密化
零式三座水偵と零式水上観測機は、レインボーのエッチングパーツを使用して改修しました。
レインボーのエッチングパーツ、製作は難しいですが効果は抜群です。
零式水上観測機の小さいフロートなどは透明のままでとまったく向きが見えませんので、ランナーの状態でサーフェイサーを吹いてあります。
航空兵装、完成です。
ナノドレッドのオプションパーツで対空防御を大幅強化
ここまでの高雄に仕上がってくると、純正品の対空兵器では、対空防御力が心許ないので、すべてナノドレッドの製品に換装しました。
連装機銃、三連装機銃については、機銃部分を黒鉄色で塗り分けてあります。
これで、高雄の対空防御は安心です。
今回、はじめてナノドレッドの双眼鏡セットを使ってみましたが、なかなか良いです。
社外品のエッチングパーツほどの緻密度はないですが、フジミの純正エッチングとは十分にバランスの取れたディテールだと思います。
これで高雄の索敵能力は大きく向上しました。
筆塗りで小物を塗りけて情報量をアップさせるポイント
舷門と舷梯は、木材の梯子と鉄の手すりという設定で塗り分けました。
応急舵は、Mr.ウェザリングカラーのステインブラウンで木目を再現し、フレームを慎重に塗り分けました。
内火艇も木甲板を丁寧にウェザリングしてから、各部を塗り分けました。キャンバスの指定色は白ですが、白だと明るすぎるため「バフ」を混ぜて色合いを落ち着かせてあります。
私の愛用の筆は、ウィンザーニュートンのシリーズ7、No.0とNo.000です。
木工ボンドを使った防風布の表現
水で溶いた木工ボンドの表面張力を利用して幕を張ります。この方法は風で押された布感をリアルに表現してくれるのでお勧めです。
ラッカー塗料直塗りで幕を張るという方法もありますが、木工ボンドは幕張と塗装とひと手間増えますがメリットのほうが大きいです。
- 幕張に失敗して、塊りが出来てしまっても水を含んだ筆でふき取ることができる。ラッカーの場合は一発勝負。
- 多少はみ出ても乾燥後は透明になるので、塗装で塗り分ければ目立たない。また、はみ出しても水を含ませた筆でふき取るこができる。
- 乾くと透明になるので、表側を塗装しても裏側の手すりのディテールがはっきりしている。
- 乾燥後の幕も弾力性があり耐久性が高い。ラッカー塗膜は、弾力性がないのでパリパリと割れてくる。
旗索と信号旗のお手軽ディテールアップ
当初、モデルカステンから新発売されたホワイトリギングでの再現を予定していましたが、予想以上に巻き癖が強いというトラブルに見舞われまして、急きょ予定変更です。
旗索には海魂の凡用ハリヤーを使用しました。少し太いのが気になりますが一度に2本ずつ張れるのでとても便利です。
1つの滑車に2本づつ張るのは、少しおっくうになるのでちょうど良かったです。
※ホワイトリギングの巻き癖が強すぎる件については、ツイッターのほうで私がたまたまハズレを引いてしまったということで解決しました。他のモデラーさんが購入したホワイトリギングについては、ここまでの巻き癖は付いていませんでした。
信号旗は、レインボーの艦名旗セットを使用しました。この商品は、デカールではなくシールです。ナイフで余白を切り取り、折り曲げて使用します。
多少厚みが気になりますが、使い勝手がよいので私的にはOKです。
空中線の張り方 インフィニモデルとモデルカステンの合わせ技
インフィニモデルのウルトラファインリギング(0.048mm)は、ナイロン材質でゴムのように伸びる性質があります。モデルカステンのメタルリギング0.06号(0.047mm)は名前の通り鋼線です。
私の最近の作品は、横方向のラインをインフィニモデルのウルトラファインリギングで、縦方向のラインをモデルカステンのウルトラファインリギングを使うようにしています。
インフィニモデルのウルトラファインリギングは繋がったラインであれば1本で張ることができるので、作業効率がとてもよいです。
ウルトラファインリギングを使用する際に注意したいのが、瞬着の付け方です。折れ点以外に瞬着がつくと、その部分のラインの伸縮性が失われて、ラインが不自然な点で曲がることになります。作業のコツは、ラインを張って状態でパーツに持っていき、そのまま5秒キープで確実にそのポイントで接着させることです。
縦のラインは、モデルカステンのメタルリギングを使いました。少し長めにはわせて、カットします。
ロープ張り
強い癖がついたホワイトリギングは、垂れたロープの表現に使用しました。
竣工
海面台座に固定して完成です。
お疲れ様でした。
やはり高雄型は艦橋のデザインが洗練されていてかっこいいね。
いつかは、迷彩高雄に挑戦してみようか思案中。
完成ギャラリー
以下、画像クリックで拡大します。
コメント